母乳育児Q&A

【助産師監修】授乳中の受動喫煙。赤ちゃんや母乳への影響は?

2018.12.19

Yoneco Oda

Mama writer

2010年生まれと2016年生まれの姉妹を育児中のママです。おっとりマイペースな姉と、好奇心旺盛でパワフルな妹。姉妹でも性格の違う二人の様子に、子育ての新鮮さや面白さを感じている今日この頃です。

浅井貴子

助産師

新生児訪問指導歴約20年以上キャリアを持つ助産師。毎月30件、年間400件近い新生児訪問を行い、出産直後から3歳児の育児アドバイスや母乳育児指導を実施。

ママ自身がタバコを吸っていなくても、家族が喫煙をしている家庭もあるかと思います。

喫煙者の周りにいる人がタバコの煙を吸ってしまうことを「受動喫煙」といいますが、赤ちゃんを育てているママとしては、タバコの煙の影響が気になるのでは?

授乳中のママが受動喫煙をすると、母乳や赤ちゃんにどのような影響を及ぼすのでしょうか?今回は授乳中の受動喫煙についてご紹介します。

タバコを吸わなくても!危険な受動喫煙

受動喫煙とは

本人がタバコを吸わなくても、喫煙者の近くにいてタバコの煙を吸い込むことを受動喫煙といいます。

タバコの煙には喫煙者が直接吸い込む「主流煙」、タバコの先端の火の付いている部分から立ち上る「副流煙」、喫煙者が口から吐き出す「呼出煙(こしゅつえん)」があります。

副流煙は有害物質を多く含む

受動喫煙とは、副流煙と呼出煙を吸い込んでしまうことを指します。主流煙と副流煙は見た目は同じような煙ですが、含まれている成分の有害性は副流煙の方が多いです。

なぜなら、主流煙は約800℃もの燃焼温度の高い部分で発生をしてフィルターを通して喫煙者の肺に吸い込まれます。

しかし、副流煙は燃焼温度が低いため不完全燃焼になり、有害物質が燃焼されにくい上にフィルターを通過しないからです。

副流煙には主流煙と比べると、タバコの三大有害物質といわれるニコチンが2.8倍、タールが3.4倍、一酸化炭素が4.7も含まれています。

受動喫煙による健康被害

受動喫煙によって引き起こされる急性の健康被害は、のどの痛み、せき、たん、鼻づまり、鼻水、喘息、目のかゆみ、頭痛、吐き気、心拍数の増加、血圧の上昇などがあります。

また、喫煙者と同様に脳卒中、心筋梗塞、肺がんなどのリスクが高まることも分かっています。糖尿病やメタボリックシンドローム、精神疾患、認知症、化学物質過敏症とも関係しているといわれています。

授乳中の受動喫煙。母乳への影響は?

母乳の分泌量が減ることも

授乳中のママが受動喫煙をすると母乳に影響が出る恐れがあります。また、喫煙しているママは喫煙していないママと比べると母乳量が少ないということが分かっています。

これは、母乳の分泌に関係のあるプロラクチンの分泌量が喫煙によって減少してしまうことが原因と考えられています。受動喫煙でも同じことが起きる可能性があります。

ニコチンの濃度が増加する

受動喫煙によってニコチンが母乳に混ざります。母乳は血液からできていますが、体内に吸収されたニコチンは、血液中よりも母乳の方がより濃度が濃くなります。

ニコチンの混ざった母乳を飲んだ赤ちゃんは、不眠、下痢、嘔吐、脈拍が多い、落ち着きがないなどの症状が現れることがあります。

母乳育児を続けましょう

母乳育児のメリット

影響が出ると聞くと、母乳を赤ちゃんに与えることをためらうママも多いかもしれません。

しかし現在は、たとえママが喫煙をしているとしても、母乳栄養で赤ちゃんが得られるメリットはタバコの害にも勝るとして母乳育児を続けることが勧められています。

母乳の中にはたくさんの免疫物質が含まれていますので、母乳育児を止めて粉ミルクに切り替えてしまうと赤ちゃんが免疫をもらうことができなくなってしまうからです。

受動喫煙後の授乳は避ける

どうしても母乳中のニコチン濃度が気になる場合は、受動喫煙した直後の授乳は避けるようにしましょう。

タバコの煙を吸い込んだ直後は母乳中のニコチン濃度が非常に高くなりますが、3時間もすればニコチン濃度はかなり低下します。

3時間以上あけてから授乳するようにすればニコチンによる赤ちゃんへの影響を軽減できますよ。

受動喫煙による赤ちゃんへの影響は?

赤ちゃんへの影響は?

受動喫煙によって母乳中に有害物質が混じること以上に、赤ちゃんが直接タバコの煙を吸ってしまう影響の方が心配されています。

発達途中にある赤ちゃんの体は、機能がまだ未熟なため受動喫煙から受ける健康被害は大人よりも深刻なのです。

赤ちゃんへの健康被害

赤ちゃんの受動喫煙による健康被害は、SIDS(乳幼児突然死症候群)、せき、たん、息切れ、気管支炎、喘息、肺炎、中耳炎、アレルギーの悪化などがあります。

また、身長が伸びなくなる、知能の低下などの発育への影響もあるといわれています。身近な人がタバコを吸うことによって、赤ちゃんの健康と将来を奪ってしまうかもしれないのです。

家庭内での受動喫煙は防げない

空気清浄機では有害物質を取り除けない

換気扇の下で喫煙をしても、タバコの煙は全ては排出されずに室内に拡散してしまいます。ベランダや別室で分煙をしても、タバコの煙は窓や扉の隙間を通って赤ちゃんのいる部屋に入り込みます。

空気清浄機はタバコの臭いは除去できますが、一酸化炭素などのガス状のものは取り除けません。

喫煙後の呼出煙や衣類にも有害物質

また、喫煙後もしばらくの間は、喫煙者の口からは有害物質の含まれた呼出煙が出ています。

喫煙した人の髪や衣服、喫煙している部屋にあるソファーやクッション、カーテンなどにもタバコの煙の成分が付着しており、それらにも有害物質が含まれています。

喫煙後すぐの赤ちゃんとの触れ合いはNG

赤ちゃんから離れて喫煙したとしても、喫煙者がすぐに赤ちゃんと触れ合ったり、赤ちゃんがタバコの煙の成分が付着したファブリックに触れることで被害を受けてしまいます。

タバコの煙は目に見えないくらいに薄くなっても健康に影響を及ぼします。

喫煙者のいる家庭では、どのような環境下で喫煙するかによって、喫煙者のいない家庭に比べて子供の受動喫煙の危険が3倍以上になるともいわれています。(ファイザー すぐ禁煙.jpより

このように、家庭内での受動喫煙は完璧には防げないということを心得ておきましょう。


完全に受動喫煙を防ぐことは難しいため、家族に喫煙者がいる家庭では、赤ちゃん、ママ、喫煙者自身の健康を守るためにもぜひ禁煙をしましょう。

禁煙をすることで受動喫煙の被害を抑えることができますので、禁煙が早ければ早いほどリスクを減らすことができます。

禁煙を自身で実行することが難しい場合は、禁煙外来を受診することもできます。家族みんなで受動喫煙の危険性を理解して赤ちゃんにいい環境づくりができるといいですね。

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■資格・免許
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