母乳育児Q&A

【助産師監修】母乳育児は昔から主流なの?母乳育児の歴史

2019.02.26

Yoneco Oda

Mama writer

2010年生まれと2016年生まれの姉妹を育児中のママです。おっとりマイペースな姉と、好奇心旺盛でパワフルな妹。姉妹でも性格の違う二人の様子に、子育ての新鮮さや面白さを感じている今日この頃です。

浅井貴子

助産師

新生児訪問指導歴約20年以上キャリアを持つ助産師。毎月30件、年間400件近い新生児訪問を行い、出産直後から3歳児の育児アドバイスや母乳育児指導を実施。

現在の日本では母乳育児が主流で、ほとんどの妊婦さんが「赤ちゃんを母乳で育てたい。」と希望しているようです。

医療機関や育児書などでも母乳育児をすすめる声が多く聞かれますが、母乳育児は昔から主流だったのでしょうか?

また、もう一つの授乳手段である粉ミルクはいつ頃登場したのでしょうか?今回は、母乳育児や粉ミルクにまつわる歴史を紐解いていきたいと思います。

昔の日本の授乳事情は?

助産師介助により自宅で出産

もともと日本では、助産師さんに介助してもらい在宅で赤ちゃんを産み、母親は乳房マッサージをしながらわが子に直接授乳をして育てていくというのが一般的でした。

しかし、どんな時代でも母乳の出が良い母親がいれば、そうではない母親もいます。

もらい乳や重湯が母乳の代用品に

まだ粉ミルクがなかった時代は母親の母乳の出が悪い場合、代わりに母乳を与えてくれる女性(乳母)を探して、もらい乳をしていました。

もらい乳ができない場合は、重湯やお米のとぎ汁、動物の乳などを与えていたそうですが、母乳に比べると十分な栄養がとれないため命を落としてしまう赤ちゃんが多かったといわれています。

牛乳等が母乳の代用品に

明治時代に入ると、糖類を加えた牛乳やアメリカから輸入された練乳が母乳の代用品として使われるようになりました。

しかし、当時の日本の一般家庭には冷蔵庫が普及しておらず、牛乳を冷蔵保存することができないため、いたんだ牛乳を飲んだことが原因で亡くなってしまう赤ちゃんも多くいたそうです。

現代のように母乳に代わる粉ミルクがなかった時代は、赤ちゃんに母乳が与えられないということは、すぐさま赤ちゃんの命に関わる重大な事態だったのです。

日本における母乳育児の歴史

日本の出産スタイルの変化

1950年頃までは、母乳による育児が当時の主流でした。しかし、新生児と乳児の死亡率は高く、1947年には新生児と乳児の死亡数が年間29万人と記録されています。

この状況を重くみたアメリカからの指導により、国は、より安全な出産を推進するための政策を打ち出します。

そして、家庭で子どもを出産するという日本の伝統的な出産スタイルは大きな変化の時を迎えます。病院などの施設での出産が増え、新生児は新生児室に入り安全に管理されるようになりました。

そのため、出産直後から母親と赤ちゃんが別室で過ごすようになり、赤ちゃんは新生児室で粉ミルクを与えられました。

産後すぐに母親が頻繁に母乳を与えることができなくなってしまうため、その後の母乳の分泌量に影響を与えました。このことは、母乳育児が減少していく要因となっていきます。

粉ミルクブームの到来

高度経済成長期に入ると、工業製品が時代の最先端でスマートであるという風潮が人々の間に広まります。粉ミルクも例外でなく大流行を迎えます。

当時のアメリカでは粉ミルクによる育児が主流で、入院中の調乳指導が多くの産院で実施されるようになりました。

このことから、母乳育児をしていても粉ミルクに切り替える母親が増えていきました。

1960年には7割あった母乳育児率は、1970年には3割に激減して過去最低の値となり、母乳育児はだんだんと姿を消していきました。

世界的な母乳育児推進運動

感染症による乳児死亡率上昇

この頃、世界の発展途上国では、不衛生な水で調乳したミルクを与えられた赤ちゃんが、感染症にかかるなどして乳児死亡数が上昇して大きな問題となっていました。

WHOやユニセフが母乳育児を推進

WHO(世界保健機関)は不衛生な水を使わず、コストもかからず母子の健康を保つことができるとして、1974年に母乳哺育推進を決議し、日本でも厚生省が母乳栄養推進運動をスタートさせました。

さらに、1989年にWHOとユニセフ(国連児童基金)が母乳育児を進めて行くための指針として、共同で「母乳育児を成功させるための10ヶ条」を出しました。

世界の全ての産科施設に対してこの10ヶ条を守るように呼びかけ、母乳育児を中心とした新生児ケアを推進しました。

母乳は必要な栄養素を備えた完全食品

そんななか、母乳成分の研究も進んでいき、母乳の中に赤ちゃんを守る免疫物質が含まれていることも分かってきました。

そして、これらの取り組みの結果、母乳による育児の良さが見直され、再び社会に浸透し、母乳育児率が上昇していくのです。

今では、母乳は赤ちゃんにとって必要な栄養素を備えた「完全食品」と呼ばれています。

授乳時に触れ合うことで、スキンシップがとれ赤ちゃんに安心感を与えたり、産後の母体の回復にも役立っているということが広く知られていますね。

粉ミルクの登場はいつ?

日本で粉ミルクが生まれたのは、第一次世界大戦中の1917年でした。

今から約100年前に、和光堂薬局(後の和光堂)が「キノミール」という国産第一号の育児用ミルクを日本で初めて販売しました。キノミールは全脂粉乳をベースにして滋養糖を添加した物でした。

当時高かった乳児死亡率を低下させるため、安価で高品質な粉ミルクを提供したいという開発者の思いから誕生しました。

その後、母乳栄養の研究が進み、新しい技術の導入などによって育児用ミルクの研究は飛躍的に進み、より母乳に近い粉ミルクが開発されるようになりました。


現在では主流の母乳育児ですが、過去には粉ミルクが流行したことで衰退したり、世界的に母乳育児を推進した歴史があったようですね。

大切な赤ちゃんの命を守り、健やかに育てたいという母親の愛情はもちろん、昔から多くの人たちの赤ちゃんの健康を願う気持ちが、赤ちゃんの命を繋いできたのですね。

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助産師/商品開発パートナー
浅井貴子
■資格・免許
看護師、助産師、IFAアロマセラピスト、JMHAメディカルハーバリスト、NCA日本コンディショニング協会認定トレーナー
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